〜千葉大学の先生と考える、マイスターズグリットとSDGs〜
マイスターズグリットは塗装業の枠を超えて、さまざまな企業や人とつながりを持つことで成長してきました。
今までの活動、そしてこれからの活動を考えたとき、SDGsは避けては通れないもの。
マイスターズグリットが取組むべきSDGsについて、千葉大学の田島先生と一緒に考えました。
マイスターズグリット株式会社
代表取締役 笹井 克太朗
広島県出身。高校卒業後、「ギター修行をする」と宣言し、バイトをしながら音楽活動を行う。さまざまなバイトを行う中で、25歳のときに知り合った会社の社長から引き抜かれ家庭用医療メーカーに就職。営業や総務などの経験を経て、33歳で友人が立ち上げたマイスターズグリット(株)の前身となる会社に転身。5年後にその会社が倒産してしまったが、社員たちの「続けたい」という声に応え、マイスターズグリット(株)を立ち上げた。
千葉大学 国際教養学部
助教 田島 翔太
東京都出身。千葉大学大学院工学研究科建築・都市科学専攻建築学コース博士後期課程修了。工学博士。千葉大学COC+事業の推進に中心的に携わり、地域志向の教育・研究に従事する一方、人口7,000人弱の千葉県長柄町に移住し、大学連携型CCRCの実現に向けて自治体や地元企業と協働する生活をおくっている。現在、千葉大学国際教養学部助教。株式会社ミライノラボ代表取締役、長柄町タウンアドバイザーを兼任。
対談
「SDGsという共通言語があると、
人と人、企業と企業が
つながりやすくなりますね!」(笹井氏)
「誰ひとり取り残さない」
それがSDGsの理念
- マイスターズグリットという会社は塗装業を行っている会社です。塗装とひと言で言っても、業務内容は幅広く、さまざまなものに色をつける加飾から、塗装機械の開発、塗装におけるコンサルティングなども行っています。ただ塗る、作るだけではなく、塗装の可能性を探りながら幅広く手がけている会社です。環境問題にも積極的に取組んでいて、たとえば塗料の匂いの問題がありました。これを解決するために遺伝子レベルで分解し、匂いをなくす技術を開発したりもあります。近年では、塗装職人の高齢化に対応するためにAIへの取組みも始めました。熟練職人の動きを撮影し、AIで解析することによって理想的な塗り方を実現できないか、そういった塗装技術の半自動化を視野に入れています。
- 田島 そうなんですね。少人数でかなり幅広くやっていらっしゃるんですね。
- 私がもともと塗装業界の人間ではなかったこともあり、業界自体の当たり前を知らなかったんです。だから、いろいろな人と横のつながりを作っていった結果、今のような形になっていきました。
- 田島 ところで、本日の本題であるSDGsについて意識されたことはありますか?
- 聞いたことはあるのですが、取組んだことはないですね。ただ、自分たちの会社のことだけを考えるのではなく、社会という観点から自分たちがどうなっていかなければいけないか、という大きな視点を持ちたいとは考えていますね。
- 田島 SDGsをしっかりと理解してさまざまな事業を組み合わせたり、社会課題を理解すると新しい事業が生まれてきたりします。そのプロセスが重要です。
- はい。
- 田島 SDGsの基本になっている考え方が「誰ひとり取り残さない」という言葉です。17の目標があるのですが、これらすべての課題を解決しようという野心的な目標だといえます。この目標を達成するためには国や国連に任せるだけではなく、企業や個人も一緒に行動しないと達成できないわけです。
- 企業としての役割などもあるんですか?
- 田島 グローバル企業の役割は大きくなっています。大企業がSDGsの役割を全うするためには、関係する企業すべてが取組まなければなりません。このような大企業の周りにはバリューチェーンと呼ばれるさまざまな中小企業が存在します。だからこそ今、中小企業もSDGsを知り、社会全体の要求に応えられる体制構築が重要だと考えています。
- 具体的にはどのようにアプローチするのが望ましいのでしょうか?
- 田島 17の目標すべてが相互に関係しあっているのがSDGsの概念です。SDGsの扱う貧困や環境の問題はさまざまな目標にまたがっており、包括的にアプローチしなくてはなりません。
SDGsの17の目標は、
独立しているわけではなく、
すべてがつながっています(田島氏)
世界の問題を意識して、
解決するために何ができるか
- 田島 SDGsの特徴の一つは、ひとつの課題を解決すると、他の課題にも影響を与えるところです。たとえば冒頭に仰っていた、有害な物質を排除する技術を確立することは、3. すべての人に健康と福祉を にもつながるし、11. 住み続けられるまちづくりを、12. つくる責任、つかう責任 などにも関わってきます。
- なるほど! つながっていくわけですね!
- 田島 問題から認識して、それを解決するために何ができるかを考えることですね。
- そう考えると、SDGsに取組むことが企業にとってもチャンスと言えそうですね。
- 田島 まったくその通りで、SDGsを理解することで、これから伸びていく産業やマーケットが見えてきます。たとえばエネルギー産業に直接的に関係のない企業が、7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに についてディスカッションする中で、成長産業に乗り出すチャンスが見つかるかもしれません。
- なるほど。塗装業という性格上、匂いや廃液と言った課題は必ずつき合わなくていけません。そういったことも6.安全な水とトイレを世界に や、11.住み続けられるまちづくりを につながってきそうですね。
- 田島 そうですね。日本ではあまり認識されていませんが、水問題は大きな世界課題です。
- やはりそうなんですね。実はタイや東南アジアで水問題について相談されたことがあって。適切な処置をせずに、廃水が工業地帯や農業地帯で垂れ流されている現状があるらしいです。そこで弊社の「ミストキャッチャー」という製品を使って、この問題を解決できないか、と。
- 田島 そういったことに取組むことで14.海の豊かさを守ろう 15.陸の豊かさも守ろう といった部分にもつながってきます。環境問題は世界共通の課題ですから。
SDGsという言葉を媒介にすることで、
共通の目標に向かってつながることができる
- 塗装業という性格上、プラスチック製造メーカーとのつき合いも多くて、14. 海の豊かさを守ろう など、けっこう社会的に問題になっているという話を聞きます。皆さん、やはり問題意識を持っているのは確かだと感じます。だからこそ、新しい容器を作って売り出すとか、SDGsを通すことでビジネスチャンスが生まれそうな気もします。
- 田島 2030年を見据えて、未来から逆算して事業アイデアを創出することもできます。
- 今までも私たちは塗装における匂いの問題や水といった問題に取組んできました。そういった経験があるからこそ、今、本当に考え始めないといけないことですね。今まで漠然と考えたり、感じたりしていたことが可視化できたような気がします。SDGsという、世界の課題から考えて、自分たちの事業に落とし込むことで、新しい何かが始まるかもしれません。たとえば墨田区の工場で働いている社員に話してみたいですね。今、やっている仕事が世界の課題解決につながっている、と。やりがいを感じてもらえるし、意識も変わってきそうですよね。
- 田島 雇用のこともSDGsには出てきます。働き方とか企業が抱える根本的な課題とか。私自身、千葉県の長柄町で地方創生に取組んでいるのですが、都市から離れたときにもっと魅力的な仕事や生活があるのではないか、ということに挑戦しています。みんながみんな、都市にきて、競い合うだけの社会ではなく、助け合う社会を築けるのではないか、立場や役職に関係なく、みんなで知恵を出し合い、課題解決に取組む、そういったこともSDGsでは語られています。おそらく笹井社長が取組んできたことは「つながり」というものだと思います。
- はい。
- 田島 SDGsも17の目標が独立しているわけではなく、すべての目標がつながっています。その「つながり」を意識して、御社の取組みを可視化することで新たな価値を生み出せるのではないでしょうか?
- そうですね。早速、どのような取組みができるか考えていきたいと思います! 本日はありがとうございました。